廃業のお知らせ
謹啓
向寒の候、貴社ますますご繁栄のこととお喜び申し上げます。平素はひとかたならぬご愛顧を賜り、ありがたく深謝申し上げます。
さて、誠に勝手なことと存じますが、このたび都合により、令和5年12月31日をもちまして廃業することになりましたので、お知らせ申し上げます。
これまで長きにわたり営業してこられましたのは、ひとえに皆様方の温かいご支援・ご愛顧の賜であると深謝いたしております。長年のご支援・ご芳情に厚くお礼申し上げますとともに、ここに謹んで廃業のご挨拶をさせていただきます。
皆様方には多大なご迷惑をおかけすることとなりますが、何とぞご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
本来であれば直接ご報告申し上げるべきところではございますが、略儀ながら書中をもってお礼かたがたご挨拶申し上げます
敬白
令和5年11月
田中バイオリン工房
田中眞次
工房廃業の後は以下の二点のことを行いたいと考えております。
ご一読いただけますと幸いです。
先ずは「小音バイオリン」の開発、製作を進めていきたいと思っています。
「小音バイオリン」という表現は一般的には使われていない言葉ですが内容としては言葉の通り「小さな音のバイオリン」言い換えれば大きな音の出ないバイオリンということになります。
集合住宅にお住いの方など周囲に対して楽器の音を気にしなければならない状況に置かれているケースもあるかと思いますが、そのような環境の中でも存分に演奏を楽しめる(練習が出来る)ような楽器を提供したいと考えています。
現在市販されているサイレント弦楽器は弦を振動させるという範囲にとどまっており楽器を鳴らすということまでは出来ていないのではないかと理解しているのですが、私の目指すところとしましては「楽器を鳴らすという部分を持っている状態で小さい音で弾くことが出来る」という楽器を作りたいと思います。
これが可能かどうか分かりませんが、もしこのような楽器が出来たらまた違う演奏の楽しみが生まれるのではないかと思います。例えば、「夜の静けさの中、数名で小さな音で弦楽合奏をする」ということなどを想像すると何か不思議な楽しさがあるような気がします。
そしてまた、楽器という商品を販売するにあたっては価格設定も重要視する必要があると考えます。しかし、この点に関しては楽器機能の開発とは別の難しさがありますが価格的に購入をあきらめざるを得ないということがないように、じっくり取り組んでいきたいと思います。
もう一点は、児童養護施設に楽器(バイオリン等)を届け、そして同時に演奏指導を提供するという「弦楽りぼん」の活動です。 この活動を行うにあたっては、楽器の調達、メンテナンス、そして指導を行っていただくボランティアの方々および児童養護施設との対応などが必要となります。
しかしながら、これらを全般的に行っていくことが能力オーバーと感じるようになってきており、しっかりとした組織に運営を委ねたいと常々思っておりました。数年前にある一般社団法人と知己を得ることができ今年4月より弦楽りぼんの活動を協働で行っていただくことができるようになりました。
これにより、私としましては弦楽りぼんで必要とされる楽器に関しての初期の修理・調整そして使用中のメンテナンスなど楽器担当という形でこれからも参加していきたいと思っています。
以上のように、今後は「小音バイオリン」と「弦楽りぼん(楽器担当)」という二点をもって進めていきたいと思っております。
何卒よろしくお願い申し上げます。
なお、「小音バイオリン」の製作、販売に目処が立つようになりましたら、この仕事を始めた当初からの希望でもありますバイオリン・ビオラの制作も楽しんでいきたいと思っております。
令和5年11月
田中眞次