6-e-1.取り付け(1) のネックの加工が終わりましたら、次はネックの接合部分に当たるボディーのほぞ穴の作成をします。
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ネックの接合部としてのボディのほぞ穴はその形状にはっきりとした寸法があるわけではなく、ネックがボディーに対して正しい状態でつけられているかどうかということで行います。その“正しい状態 ”について以下に記載しますが、これらの考え方は製作者により完全に一致しているというものではないと思いますのでご承知ください。
“正しい状態”は次の4つの要素で構成されます。
1.指板の中心線(42Rの頂部を通る直線)を延長し駒の置かれた位置で表板から27.5mmの高さとする(ネックの傾きの設定)。
2.ナットと指板の接合部から表板の縁までの距離を130mmとする(ネックとボディにおける弦長の割合)。
3.バイオリンを正面から見たときの楽器の左右対称における指板の正確な中心としての位置(ネック・指板の左右のぶれ)。
4.ネックとボディーの接合面(表板パフリングの辺り)で表板から指板までの距離が高音側(1弦側)で6.0mm、低音側(4弦側)で6.5mmとする。
以上の確認方法として、
1.2本の定規 ⇒ (30cm定規を指板の上に置き、15cm定規を駒位置で表板より垂直にセットし30cm定規までの距離を測定)
2.定規(30cm)
3.目視 ⇒ (ナット側から見て指板の両サイドの縁の先に見えるf 字孔の位置など)
4.定規(15cm)
で行っていますが、適宜工夫をしてみてください。
そして、これらの要素がすべて満たされた上で最終的にボディとネックがピタリと隙間がなく接合されるようにします。
しかし、この「ピタリと隙間なく」 ということはボディーにネックをニカワ付けし終わった状態をいうのであって、単にネックとボディーのほぞ穴の加工が終わった時点ではないということを知っておく必要があります。 といいますのは、木にニカワを付けることによりその部分が膨らむため、この変化をあらかじめ予想しておかないと接着時に予定通りの結果にならないということになります。この「ピタッ」は経験により習得していく部分でもあり難しいところであります。
ということで、このネックの取り付け作業はとても大変であり、それと同時にバイオリンの演奏上の機能に関係する重要な要素であるということを忘れないでほしいと思います。(作業に夢中になり写真を撮り忘れました。)
製作工程 メニュー
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次にボディとネックの木口にニカワを十分に吸い込ませます。これはニカワ付けの際に、木材同士の接着が完了する前に付けたニカワが小口に吸い込まれてしまうということが起きた場合、接着部分にニカワが存在しないということになってしまうため、これを防ぐという考え方からです。
そのために、先ずはニカワが吸い込まれやすい木口にたっぷりニカワを置き、充分に染み込んだら(ニカワの濃さにもよりますが4時間程度経過するとOKのようです)表面の余ったニカワをウェス(布)等で拭き取ります。この際、ウェスにお湯を少し含ませてから軽く絞って使うとスムーズにふき取れると思います。もしニカワがたっぷり残っているようでしたら平のみ等でこそげ取るようにすると効率が良いです。
この作業は長期間の接着力の維持を考えた場合に大切なこととなりますので、一手間かかりますが行っておくようにしておくと良いと思います。