バイオリンの顔とも言える表板に f字孔をあけます。
f字孔は音響的に大きな要素を持っているだろうことは間違いないと思いますが、同時にバイオリンにおける f字というそのデザイン面での重要なポイントでもあると考えます。したがって、その加工には製作者の相当の木工技術が求められるところです。
作業としては f字形状を表板に描いた後にナイフで “f” を削り取っていくわけですが、ナイフの先をしっかりコントロールしないと、“f”を形作る曲線が美しくできません。ナイフがいくつかの年輪を横切るときに冬目と夏目のそれぞれの層の硬さが異なるので、使い方の技術だけではなくナイフが良く研がれた状態であることも要求されます。
ネックの渦巻きと同様に f字孔 の形状には製作者のデザイン面の個性および木工技術の確かさが現れるところでもあり腕の見せどころであると同時に木を削って造形するという木工の楽しさの詰まった工程であると思います。充分に楽しんでいただきたいと思います。
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f字孔があけられているゲージを用意します。ここで使っているものはバイオリンの外形形状のゲージと同じく親方が持っているゲージをコピーさせてもらったものです。私の大切な財産です。
ゲージの表板へのセッティングは、
1.上下の位置決めは、表板の最上部の縁(ネックの差し込まれるところ)からテールピース側に195mm下がったところで
中心線に対して垂直線を描き、その線上にf字孔の切り込みをセットします。(写真では分かりにくいですが・・・)
2.左右の位置決め(f字孔の傾き加減にも影響します)は、中心線からf字の上の丸い穴部分の中心線側の端面(赤の印)
までが21mm、同じく中心線からf字の下の丸い穴部分の外形側の端面(青の印)までが66mmとします。
以上のセッティング方法はf字孔の形状によっても多少異なることもあるかと思いますが、概ね間違いはないと思います。
この際の注意点としましては、穴をあけることになりますのでボディー内部の構造との関連もあります。上の小さい穴はバスバーが近くにニカワ付けされることになりますので、その位置が中心線に寄り過ぎるとバスバーの貼り付けの問題が生じます。また下の穴は外形に近いために外側により過ぎると横板&ブロックとの接着面に影響が出てしまいます。この辺りにも気を付けいてf字孔のセッティングを行ってください。
