(注記)
「厚み出し」の内容は表板、裏板の作業に共通していますので この章は表板・裏板における作業として参考にしてください。
したがって、以下ここでいうところの板はボディーの表板、裏板の両方についてのこととなります。
なお、ここの掲載画像は裏板作業時のものを使っています。
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表側のアーチ出しの作業が終わったら次は裏側(ボディーの内側)を削ることによる板の厚みを作り出していきます。
バイオリンの外形ゲージと板を中心線が合うようにして重ねて、バイオリンの完成形状を板の平面側にケガキます。現時点では完成形状よりも全体的に数ミリ大きいはずです。
次にその線から内側に6mmのところをプロットしていき(15cmスケールを使っています)、一周して点が付け終わったらそれらの点を出来るだけ滑らかにつなげて曲線を描きます。上下ブロックの当たる部分は外形より2mmぐらい大きめに線を書きます。具体的には、上ブロックは58mm×16mm、下ブロックは54mm×16mm程度になると思います。(画像を見てもらうと分かるように最終的にはフリーハンドでこのようなカーブの付いた形になります。)
コーナーブロックの部分はアッパーバウツからCの部分、そしてCの部分からローアーバウツに滑らかに繋がるように線を書きます。
この線を目安に削っていきますが、決してこの線を越えて外側を削ることのないように注意してください。この平面部分は、この後、横板が接着されるところになりますので、そのための接着面が絶対的に必要となります。
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木の厚みの最終仕上げは、(裏板の場合)中央付近が4.5mm、周辺が3.0mm、(表板の場合)中央付近が3.0mm、周辺が2.5mm、として後は中央から周辺に向かって徐々に薄くしていくという感じになります。
しかし、厳密にこの数値にこだわるのではなく、板を持って指で叩き音を確認しながら作業することも大切です。この音の確認に関しては音響的に計測をするわけではなく、削り作業により板の厚みが薄くなるにつけて響きが変化していく中で、「ここだ!」というところになるまで削っていきます(といっても、この見極めもなかなか難しく「ここら辺りかな?」となってしまうこともないわけではありません…)。
さて、下の画像(裏板加工です)では真ん中付近の厚みは15mm程あり、その他もかなり厚いです。まず最初の狙いとして中央付近を10mm、上下の部分を8mmになるように削っていきます。そして中心から徐々に外側に広げていきます。
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以上の作業において、やはり厚みは重要な要素であり厚みの確認も細かくするようにします。厚みの測定にはキャリパーという計測器を用いています。同様な計測器としてはマイクロメータがありますが、素早く確認できるという点ではキャリパーが適していると思います。下の画像がほぼ完成した状態となります。
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最終的にはアーチ出し同様、光を当てながらスクレーパーで綺麗に仕上げます。ただし、ノミ等の一削りにより一部分が極端に薄くなってしまったような場合、その部分の凹凸をなくそうとするとその周囲の厚みに影響が出ることになりますので、そのような場合は残念ながら凹凸の残った状態で止めとくほうが良いと思います。恐らく、厚みの方が大事なはずです。
製作工程 メニュー
以上で厚み出しの説明を終わります。
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