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11.表板とf字孔

バイオリンの顔とも言える表板に f字孔をあけます。
f字孔は音響的に大きな要素を持っているだろうことは間違いないと思いますが、同時にバイオリンにおける f字というそのデザイン面での重要なポイントでもあると考えます。したがって、その加工には
製作者の相当の木工技術が求められるところです。

作業としては f字形状を表板に描いた後にナイフで “f” を削り取っていくわけですが、ナイフの先をしっかりコントロールしないと、“f”を形作る曲線が美しくできません。ナイフがいくつかの年輪を横切るときに冬目と夏目のそれぞれの層の硬さが異なるので、使い方の技術だけではなくナイフが良く研がれた状態であることも要求されます。

ネックの渦巻きと同様に f字孔 の形状には製作者のデザイン面の個性および木工技術の確かさが現れるところでもあり腕の見せどころであると同時に木を削って造形するという木工の楽しさの詰まった工程であると思います。充分に楽しんでいただきたいと思います。

表板のアーチ及び板厚の削り出しは裏板のその作業と同様と考えてください。   (参考)5.アーチ出し 8.厚み出し

​製作工程 メニュー

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f字孔があけられているゲージを用意します。ここで使っているものはバイオリンの外形形状のゲージと同じく親方が持っているゲージをコピーさせてもらったものです。私の大切な財産です。
ゲージの表板へのセッティングは、

1.上下の位置決めは、表板の最上部の縁(ネックの差し込まれるところ)からテールピース側に195mm下がったところで

  中心線に対して垂直線を描き、その線上にf字孔の切り込みをセットします。(写真では分かりにくいですが・・・)
2.左右の位置決め(f字孔の傾き加減にも影響します)は、中心線からf字の上の丸い穴部分の中心線側の端面(赤の印)

  までが21mm、同じく中心線からf字の下の丸い穴部分の外形側の端面(青の印)までが66mmとします。

以上のセッティング方法はf字孔の形状によっても多少異なることもあるかと思いますが、概ね間違いはないと思います。

この際の注意点としましては、穴をあけることになりますのでボディー内部の構造との関連もあります。上の小さい穴はバスバーが近くにニカワ付けされることになりますので、その位置が中心線に寄り過ぎるとバスバーの貼り付けの問題が生じます。また下の穴は外形に近いために外側により過ぎると横板&ブロックとの接着面に影響が出てしまいます。この辺りにも気を付けいてf字孔のセッティングを行ってください。

f-1.gif

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ゲージにより表板に f字孔の形状が描けましたらf字孔の中心、刻み目辺り(赤の印)にキリで穴を開けます。この穴から糸ノコ(電動ではありません)の刃を入れますので刃が入る程度の穴があいていればよいです。出来るだけケガキ線の近くを切れば次のナイフの作業が少なくて済みますが、近すぎるとミスの可能性も出てきますので注意してください。

f-2.gif

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糸ノコで f字孔が概ね切り取ることが出来ましたら、ナイフおよびヤスリでケガキ線がなくなるように仕上げていきます。 f字孔のゲージで表板にけがいた線は厳密に考えればゲージの内側の線であり、この線が消えるところまで落として初めてゲージと全く同じ形状が出来ることになります。しかし、やはり最終的には自分の目で、曲線の美しさ・全体のまとまり・左右の対称性などを見極めて仕上げていくことが必要かと思います。

f-3.gif
f-yasuri.gif

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 f字孔が納得のいく状態まで完成しましたら、 f字中央の2か所に小さな切り込みを入れます。内側の切り込みの位置は表板の中心線上で最上部の縁から195mmのところに中心線に対して垂直に引いた線と交わるところとなります。この195mmは駒をセットする際の目安となる位置なので重要なポイントとなります。もう一方の外側の切り込みは内側より少し上にずらした場所とします。この刻みは内側とは異なり、楽器構成上の何かの目印となるものではなく飾りとしての要素となります。したがって、先ずは内側の切り込みを付けて、それに対して“この位置”というところに刻みを入れますが、大体、内側の切り込みの1つ分ほど上といった感じが落ち着くのではないかと思います。また、数百年たった楽器などにみられる刻みの形状のトロっとした感じは年月が作ったもので新作の場合はキチッとナイフで切り込みを入れるのが正しいと考えます。

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